中川多理写真展「貴腐なる少年たちの肖像」
中川多理写真展「貴腐なる少年たちの肖像」
2019年3月2日[土]~3月31日[日] @パラボリカ・ビス
三島由紀夫『癩王のテラス』、山崎俊夫『美童』、アントナン・アルトー『ヘリオガバルスまたは戴冠せるアナーキスト』、服部まゆみ『この闇と光』、山尾悠子『小鳥たち』……
『夜想#中川多理——物語の中の少女』出版記念展(京都・春秋山荘)には、東京の展示とはまた趣の異なる新作が並んだ。思いがけず、少年の人形が多く、しかも肉体と精神の闇と健全を交錯させる極北の頽廃が見られることになった。
京都の冬は厳しく、人形たちはひっそりとしかしながら孤高の存在を気高く時を過ごしていた。 歴史の中でひときわ異彩を放ったからこそ、三島が、アルトーが着目した少年たちが、中川多理の手によって形をもたらされ、そして展覧の期を終えて姿を消す。なんと至福の冬であったことか。
中川多理の選んだ小説を読返しながら、つくづく思うのは、人形の姿は、人や場面を写すのではなく、その存り様を収める器のようなものなのだと。なおかつ人を魅了し心に分入る不可思議の魔をもっているのが人形であるとすると、中川多理の人形の現在は、すでに伝説を生きているのかもしれない。
中川多理の写真によって春秋山荘での展示を、もう一度、深く体験し、 少年たちが運命としてもたなければならなかった[貴腐]がいかに精神を輝かせるかを追体験したい。
(今野裕一)
+─────────────────────────────────+ 森島章人+中川多理 対談 +─────────────────────────────────+
■日時:3月17日[日]19:00~ ★要予約 ■料金:1,500円(入場料込) ■会場:パラボリカ・ビス
森島章人によるヘリオガバルスに捧げる短歌の朗読も。 ギター演奏:安藤則男
「人形」―――中川多理へのオマージュ
中川多理の人形は痛みを知っている。繰り返される破壊の世にあって、人形も無垢ではいられない。 <形>は煉獄である。こころを持たないゆえに、なおいっそう、痛みは体軀に及び、人形たちはしんしんと耐えている。すでに内側に、何かが刻印されてしまったかのように。 人形たちは、目を閉じてそれを見る。それを美しい聖痕、あるいはいびつな星痕と呼んでもかまわないだろう。
森島章人